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サルコジvsECB

フランスの新大統領にサルコジ氏が選ばれました。氏の経済政策について調べてみたのですが、彼はかねてよりECB(ヨーロッパ中央銀行)に対して「インフレ率をおさえることばかり気にしていて、成長がおろそかになっている」と不満をぶちまけていたようです。

統一通貨により自国での独立した金融政策が不可能となったフランスでは、ドイツとともにデフレではないもののやや低め(1%台)のインフレ率が続いています。もう少し高めのインフレを許容してでも金融を緩和すれば、失業も減りもっと経済が成長するだろうというのがサルコジの主張です(ユーロ高もかなり気にしているようです)。

しかしECBは独仏以外の国も気にする必要があり、スペインが3.6%、ギリシャが3.3%というインフレ率の状況を見ると、緩和はむずかしい気がします。そして、EU各国の財務大臣はサルコジに対し「中央銀行の独立性は重要である」という警告を発しました

高インフレで好景気なスペインやギリシャの代表がそう発言するのは当然ですが、フランスと同じく低インフレで金融政策による刺激の余地がありそうなドイツも「中銀の独立性マンセー」なので、フランス大統領だけが緩和しろと言っても相手にしてもらえそうもありません。

あとは財政政策ですが、これもEUの縛りがあって好きなだけ赤字を増やすことは許されていない。「じゃあユーロやめてフラン復活させるからいいよ」とタンカ切ってユーロから離脱してくれると大変面白いのですが、まあそれはムリでしょう。

すると、フランスはもう他国の金融政策を攻撃するぐらいしか手がなくなります。つまり中国や日本に対して、もっと金利を上げて通貨を上げろ、と注文を出してくる。これは自国のインフレ率を上げるのには役に立ちませんが、サルコジは為替レート(ユーロ高)の方を問題視しているようなので、これでもいいわけです。

従来、ECBの金融政策の問題点を指摘するヨーロッパ政府首脳はいなかったので、その点を真っ向からとりあげたサルコジは偉いと思うのですが、その行き場のない攻撃先が日本に向いてくるとすれば、とっても困った存在となってしまいます(前任者と違い日本嫌いのようですし)。

日本がそのような不当な要求をちゃんとはねつけられればいいのですが、逆に嬉々として(それを口実にして)利上げしそうな奴等が牛耳っていますからねえ。

参考: ユーロゾーン各国の実質成長率とインフレ率(IMF 2007年版WEO)
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2007年05月09日 未分類 トラックバック:1 コメント:2

物価下落はエネルギー価格の下落が原因か

読売の記事より。
総務省が27日発表した3月の全国消費者物価指数(CPI)は、価格変動の大きい生鮮食品を除く総合で99・6となり、前年同月に比べて0・3%下落した。CPI上昇率がマイナスとなったのは2か月連続で、下落幅は2月より0・2ポイント拡大した。

 昨年に比べて原油価格が低下し、ガソリンや灯油など石油製品価格が前年同月より1・4%下落したのが主因だ。


うーん。食料とエネルギー価格を除いた物価指数(コアコアCPI)は、前年同月比で-0.4%と、エネルギー価格を含む指数よりも大きく下がっているのですがねえ。

3つの消費者物価指数の内訳はこうなっています。
CPI=生鮮食品+生鮮以外の食料+エネルギー+その他
コアCPI=生鮮以外の食料+エネルギー+その他
コアコアCPI=その他

で今回、エネルギーは-0.5%下落、食料全体が+0.8%上昇、生鮮食品は+3.6%上昇となっており、コアコアCPIがコアCPIに比べて下落幅が大きいのは食料全体を除いているためです。

しかし、エネルギーや食料は変動が大きいので除いた方がノイズが少なくてよい、というのがコアコアCPIの主旨のはずで、そのノイズを除去しても-0.4%という事実を無視して「CPIの下落は石油製品価格の下落が主因」と言ってしまうのは嘘ではないにせよ「エネルギー価格が安定すればデフレは解消するんだな」という誤ったメッセージを伝えてしまうことにもなりかねないと思います。

もちろん、「利上げは慎重に」という記事の主旨には賛成です(私はむしろ、もういちど利下げした方がいいと思っていますが)。


ところで、コアコアCPIって過去(1970年以降)にさかのぼって計算されてるんですね。全然知りませんでした。
http://www.stat.go.jp/data/cpi/series/csv/j004.csv
↑の最後の方の列(excelで読むとFR)のところにあります。

2007年05月01日 経済統計 トラックバック:0 コメント:0

リサイクルしますか、しませんか、それが質問です

100%再生紙は環境に悪い、という話が朝日新聞の記事に出ていました。
日本製紙は古紙100%の再生紙の販売を9月をめどにやめる。木材チップを使わず環境に優しいイメージがあるが、古紙リサイクルには石油、石炭など化石燃料が大量に必要なため、100%にこだわるべきではないと判断した。日本製紙連合会によると製紙大手では初めて。古紙配合率を70%に引き下げ、化石燃料使用量を10%程度減らす。引き下げた分は割高な木材チップを使うためコスト全体は上がるが、価格は据え置く。


実は今年の初めに中西準子先生が、製紙業界へのコメントとして以下のようなことを雑感に書かれていました
紙のリサイクルを行わず、パルプから紙を作るようにするとエネルギー原単位は大幅に低減する。その上で、植林活動を行えば、排出が相殺されるため、ネットでの排出量はほとんど0になるだろう。

今回の決定は先生の助言を受けてのことだったのでしょうか。あるいは、原油や古紙の価格上昇も関係しているのかもしれませんが、いずれにせよ産業界が「何が何でもリサイクル・リユーズした方が善」という幼稚な段階を脱しつつあるのは好ましいことだと思います。

2007年04月25日 環境 トラックバック:0 コメント:0

日銀福丼総裁インタビュー

ブルー・ムバーグが日銀総裁の単独インタビュー記事を載せていました。大変興味深い内容だったので以下に勝手に翻訳して転載します。なお、ところどころ誤訳があるかもしれませんが、あらかじめ御了承ください。


ブルー・ムバーグ(以下、ブ): デフレ脱却が見えてきたということですが。

福丼総裁(以下福): そのとおりだ。長いこと我々は低金利に苦しめられてきた。が、それももう終わりだ。これからはどんどん金利を上げていく。

ブ: 失礼ながら、問題の本質は低金利ではなく低いインフレ率の方ではないのでしょうか?

福: 誰がそんなことを言ったんだね?我が国の一流紙には、「世界的にみても異常に低い金利」というフレーズは毎日のように出てくるが、デフレについてはほとんど触れられていない。庶民はデフレより、預金に利子がつかないことを心配している。

ブ: …それはともかく総裁、今日はいかにして日本はデフレから脱却できたのかというお話をうかがいたいのですが。

福: ふん、いいだろう。我々は早見前総裁の時代から長いことゼロ金利、量的緩和政策を続けてきた。しかしデフレはいっこうにおさまらなかった。

ブ: はい。

福: そこでわれわれは発想を転換した。むしろ、金利を上げるべきだと考えたのだ。

ブ: (!?)それには理論的根拠はございますか。

福: これからそれを説明しようとしていたところだ。利上げがインフレをもたらす理由は3つある。

一つめは、預金金利が上昇することにより、死蔵されていた現金が銀行に戻ってくるということ。日本では、老人が死んだあとで大量の現金が発見されるということがしばしば起っている。一斗缶の中に七億円もお札が詰めこまれていたとかね。預金にまともな金利がつくようになれば、こういう連中はみな現金を銀行に預けるようになるだろう。

ブ: それがなぜインフレにつながるのでしょうか。

福: マネー量は流通現金通貨と預金残高の和で定義されるが、こういう死蔵されているマネーは現実経済にとって存在しないのと同じなのだ。我々がいくらマネタリーベースを増やしてもマネーサプライが増えないのは、これらの死蔵マネーが貨幣の流通速度を低下させているためだ。したがってそれらが表に出てくることにより、実質、マネーが増加したのと同じ効果をもたらすはずだ。

ブ: なるほど。二つめは?

福: 安心効果だ。これは、日銀が金利を上げたことで、「ああ、もうデフレは終わったのだな」と投資家が安心して投資できるようになる、ということだ。デフレ脱却したにもかかわらずゼロ金利を続けていたのでは「まだ日本経済はダメなのか」と海外からみなされてしまうからな。

ブ: でも実態がデフレのままで金利を上げては元も子もないのではありませんか。

福: そこで三つめの効果、かけこみ効果が重要になってくる。これは、利上げをいきなりやるのではなく、実際の利上げの半年ないし1年前から「利上げするぞ利上げするぞ」とアナウンスを流す。それによって投資するべきかどうか躊躇していた企業の背中を押してやるのだ。今借りて投資しないと来年は金利が高くつくぞ、と脅すわけだ。

ブ: それによって設備投資や住宅購入などの需要が増えるというわけですか。でも、その手は1回しか効かないのでは?また利上げ後は逆に需要が落ち込む心配があります。

福: 1度利上げしたら、また次の利上げが近いぞと言って脅すのだよ。今年は去年より金利は上がったが、来年はさらに上がるとなれば、またいやいやながらも金を借りるだろう。これで実需が増えれば、少しだがインフレ率も上昇する。それで利上げ分は相殺されるから、1年前と比べて苦しいということはないはずだ。

ブ: えーと…それに似たような提案をどこかで聞いたことがあります…そう、毎年消費税率を少しずつ上げていくという話です。たしか、ヒロ・ヤマガタという方の提案ではなかったですか。

福: よく知っているね。実はこのアイデアはその話から着想を得ているんだ。

ブ: なるほど、それで日銀が実際の利上げより前から利上げを臭わせるような発言を繰り返していたわけがわかりました。デフレ脱却のためにはあれは必要なことだったのですね。

福: 理解していただけたようでうれしいよ。

ブ: しかし3月の消費者物価指数ではコアCPI(注:コアコアCPIのこと。アメリカではエネルギーを除いたものをコアCPIと呼んでいる)が-0.3%と、あいかわらずのデフレのようですが。

福: そんな新しい指数のことは知らないね。昨年から始まったものだし。連続性がないよ。

ブ: GDPデフレーターも-0.5%です。

福: しかしそれでも以前の-1%台よりは上がっているではないか。それに銀行の貸出残高を見てみたまえ。以前は減る一方だったのに、我々が利上げアナウンスを開始した2005年後半から徐々に上昇している。

ブ: (量的緩和解除直後は下がってるけどなあ…まあいいや)今後、インフレが実現されなかった場合はどうされるおつもりですか。利下げの可能性はありますか。

福: 利下げは絶対にない。先程述べたのと逆の効果が生じることになるからね。ひたすら利上げだよ。それに、消費者物価の一部には家賃など、金利に関連するものが含まれている。利上げすればいやでもCPIは上昇するさ。

ブ: …。

福: さて、そろそろ失礼してよろしいかな?この後宴会に招かれているのでね。

ブ: ノーパンしゃぶしゃぶですか?

福: (憮然とした顔で)失礼な。私が行くのはもっと上品なところだよ。

ブ: 失礼いたしました。本日は貴重なお話をうかがうことができました。ありがとうございます。

(以上)

無謀な利上げとばかり思っていたのですが、ここまで深謀遠慮があったとは。福丼総裁おそるべし。

2007年04月01日 未分類 トラックバック:1 コメント:2

レジ袋有料化への疑問

安井至先生の公正取引委員会とレジ袋という記事についてコメント(つーか、ほとんど他の人の意見のコピペです)。

事の発端は次のような話です。
「レジ袋ゼロ運動」に「待った」 1枚5円が独禁法違反

家庭ごみを減らすための「レジ袋ゼロ運動」の一環で、新潟県佐渡市が4月から全島内の小売店でレジ袋を1枚5円で販売させる取り組みに、公正取引委員会から待ったがかかった。「1枚5円」に統一することが、自由な営業を妨げるため独占禁止法違反の疑いがあると指摘された。このため市は、「袋代は自由に設定」と変え、「5円」をうたって作製したポスターも廃棄する。

同市は、トキの放鳥を来年に控え、「美しい島づくりを」と、2月から「レジ袋ゼロ運動」のPRを始めた。4月から有料化するレジ袋の代金の5円は、買い物袋「マイバッグ」の製作費に充てる計画だった。

人口6万8000人、レジ袋を配っている小売店はざっと800店という島だけに、小売業者から「足並みをそろえたい」との要望があり、市側で価格を決めた。

念のために公取委に照会したところ、一律価格は「不当な取引制限に当たり、カルテル行為を禁じた独禁法に触れる」との回答があった。

公取委は「値段は各者が自由に決めるもの。目的は別にして、強制したり、離脱が困難だったりする価格設定には問題がある」と話している。



これについて安井先生は
そもそも、環境問題とは、市場経済に100%任せて、自由な競争だけを原理とした社会では解決が不可能という立場に立たざるを得ない部分がある。

と、独禁法の対象外にしたら?とおっしゃっています。

しかし環境負荷については、容リ法によって再生化義務がすでにあるわけで、レジ袋メーカーやスーパーはそのぶんのコストをすでに負担しているはず(してないとすれば、容リ法自体が役立たずなのでまずそちらをなんとかすべき)。すでに負担しているコストに加えて、さらに有料化をおしつけるのはおかしな話です。

また、レジ袋有料化+マイバッグによって環境問題が改善されるかどうかはおおいに疑問です。この点について、いちごびびえすでの匿名さんの記事にて指摘がありましたのでそのまま引用させていただきます。


174: 名無しさんの冒険  2007/03/07(Wed) 19:28
税制による規制とはちょっと違いますが、容器包装リサイクル法という法律がありまして、再処理費用の内部化はすでに図られています。有料化が話題になったのは、マイバッグ運動を進めたい環境左翼の人が、マイバッグが進展しないのはレジ袋を無料で配っているからだ考えて運動をしているからです。彼らは、資本主義的大量消費社会を嫌悪して、「買い物籠を下げて買い物に行った時代」を懐古しているのです。サーマルリサイクルを含めた大局的な資源のリサイクルを考えているのではなく、身近なことで自分たちだけで実行できる局所最適的な満足感が欲しいのです。このことは、環境問題をやっている人としばらく話をすればわかります。自分の価値観を他の人にも広めて啓蒙したい。トータルでよくならなくても、非専門家である自分たちの責任ではない。活動の目的は自己満足です。必ず、こう言います。
 
175: 名無しさんの冒険  2007/03/07(Wed) 19:29
(続き)スーパーは消費者あっての店舗ですので、割とこういう話には協力的です。ただ、一部環境左翼に釣られて本来の消費者にそっぽ向かれないように、注意深く進めているというのが実情です。コンビニは業態としてコンビニエンス性というのが売りですので、レジ袋有料化やマイバッグ運動のような消費者に負担を求める仕組みには企業理念(消費者へのコンビニエンスの提供)レベルで抵抗があると思います。

容器包装リサイクル法が施行され、加えてデフレがこういう状況ですので、レジ袋は皆さんが気づかないうちに、厚さがほぼ半分になり(1.5リットルPETボトル1本で破けるレジ袋なんてのもあります)、取っ手の長さが数センチ短くなり、縦の長さも短くして容積を減らして、原料使用量の削減なんてのが行われています。

レジ袋が有料化すると、「レジ袋の粗利益率は60~80%」になります。「大きな利益をとって、お客様にお売りするレジ袋が、チンケなものだとクレームになる」という事で、厚さが元に戻り、小さい物をたくさん売るわけにいかないので、必然的に無駄なほど大きなサイズ(LLとかLサイズ)に統一される事になります。有料化でマイバッグに移行する分があるでしょうが、サイズ拡大と厚さアップで原料使用量の増減がどうなるのかは恐らく誰も調べていません。
 
176: 名無しさんの冒険  2007/03/07(Wed) 19:32
マイバッグ化にも色々懸念材料があります。マイバッグも石油資源で作られてますし、女性がマイバッグを購入するからには季節毎の流行商品になり、年間マイバッグ購入数を考えたらレジ袋時代より資源を消費する事になるでしょう。ついでなので予言しておきます。そのうちにコカコーラあたりが、PETボトルに映画キャラクター絵柄のマイバッグをおまけでつけるキャンペーンを打つでしょうw。

加えて、水気のある商品をそのままマイバッグに入れて「液漏れ」のクレームを受ける事がかなり確実に予想されており、この手のものについては簡易包装をやめてしっかりとした包装にするか、それとも別にポリ袋に入れてからマイバッグに入れる事になります。
そして忘れてはならない事は、マイバッグは商品であるが故に「容器包装リサイクル法の対象外」だという事です。これに関連したジョークで、レジ袋も100枚入り300円くらいでレジ横で束で売ったら容リ法対象外になるよねとか、レジ袋有料化は特例で容リ法対象に残りますが、ごみ袋に取っ手をつけて1枚5円で売ったら容リ法の対象外になるよねというような事が言われています。まあ、こういう揚げ足とりを実行に移すと役所に見せしめ攻撃くらうの見えていますので、空気を読める人はやらないと思いますが。
もちろん、マイバッグ慎重論のひとつに万引き対策があるのも事実です。

問題はですね。環境問題を訴えるのも消費者、それによって生じた不利益をクレームとして主張するのも消費者、万引きする人も消費者という事で、全ての消費者が満足できる解決策を考えると、どうも逆に環境負荷があがるんじゃないかと言うことです。
同様に、経済産業省のやり方を見ていると、「レジ袋を削減する」という手段が、自己目的化していて、環境負荷があがってもレジ袋の使用さえ削減できればOK的な、インチキ臭さを感じることです。まあ、役所のやることはそんなものなんでしょうが。


また、レジ袋有料化に関しては「ふぉーりん・あとにーの憂鬱」のレジ袋「禁止」案の「?」でも疑問が提示されています。こちらは

  • 袋を有料化した場合に消費に与える影響
  • コスト負担が小売業者から消費者に移ることによりかえって小売業の袋リデュース努力がなくなってしまうのでは
  • コンビニ弁当等の包装がかえって過剰になるのでは

等の指摘があります。

何が何でもレジ袋有料化ととなえる前に、それがトータルの環境負荷を改善するのかどうか、今一度しっかり検討すべきではないでしょうか。またその検討には、是非とも経済学者を加えるべきだと思います。

2007年03月18日 未分類 トラックバック:2 コメント:2